全国からの不服申し立ての事例
これらの記事は、私たちが心配していた介護保険の問題点を如実に表していると思います。
1.一次判定は基本的身体の状況のみを問題にしていて、社会的行為能力及び社会的条件を考慮していない。
2.介護時間の結果だけを統計的な処理で作られた要介護認定’99ソフトで一次判定がされるから、自立、要支援、要介護1は意味あるものとして区別できない。
3.認定審査会の二次判定で必ず一次判定の問題点を修正されるとは限らないから、一次判定の問題点を決して軽視してはならない。
また、調査員の基本調査及び特記事項、医師の意見書、審査会の議論の中身もどうだったのか?注目したいところです。また、不服申請でこれらの中身も明らかにされるのかも、みんなが関心を寄せるところだと思います。
@ 金沢の全盲男性「自立」判定に不服訴えーヘルパーの力 欠かせないのにー (新聞転写)
(北陸中日新聞1999年11月16日(火)新聞記事より)
盲導犬とともに一人暮らし 調理や買い物できない。
なぜ、全盲で脳梗塞(こうそく)の症状があるのに「自立」判定されたのだろうか。介護サービスの対象外となる「自立」と判定された同市内の全盲の男性(55)が15日、この判定結果を不服として石川県介護保険審査会に審査のやり直しなどを訴えた。男性は1993(平成5)年、糖尿病が原因で失明。軽い脳梗塞の症状があり、介護保険制度で介護サービスが受けることができる40−64歳までの第2号被保険者に該当。介護保険サービスが利用できる要件の一つで「脳血管疾患」に当てはまるため、「社会的な介護サービスが受けたい」と、金沢市の要介護認定審査を受けた。両親や兄弟に先立たれて家族がなく、生活するうえでホームヘルパーが唯一のよりどころになっている男性。 6年前、国立大学の事務職員時代に突然失明して、その後、退職。失明の失意からふさぎ込んだ時期もあったが、3年前、親身になって話し相手になってくれたホームヘルパーの献身的な介護をきっかけに、前向きに生きることを決意した。「身寄りのない私にとって、ヘルパーさんは心の支え。でも、ヘルパーさんに頼るだけでなく、自分のできる範囲で『自立』しなくては…」。入浴(シャワー)、洗濯、部屋掃除は自力で行うほか、つめは毎日、ヤスリがけして手入れするなど、「やれることは自分で」との強い自立心を持つようになった。要介護認定の訪問調査で、男性は「入浴」「つめ切り」など現実の生活実態を反映する項目で、「自立」と記入された可能性が高い。が、どう頑張ってもこの男性にはできない「調理」や「一人で買い物」などの調査項目は設問にない。
A 埼玉県 痴ほう症状について、十分な調査が行われていないのでは
(讀賣新聞 埼玉讀賣県北版12月7日より)
4月から始まる介護保険制度で、市町村の介護認定審査会で5段階の要介護度のうち軽い「要介護2」と判定を受けた利用者が、要介護度の判定に不服があるとして県の介護保険審査会に審査請求していたことが6日わかった。10月に要介護認定の申請が始まり、11月ごろから判定結果が申請者に通知されているが、不服審査請求は本県では初めて。請求を受けて県は近く、医師と弁護士、学識経験者の3人で構成する県介護保険審査会を開催し、審議する予定だ。
不服審査請求を行ったのは、県入間東福祉保健総合センター(川越市など10市2町)管轄内に住む女性(86)の親族。11月17日付で市町村長が認定した「要介護2」について、現在の女性の状態は、「要介護2」で妥当なのか、特に痴ほう症状について、十分な調査が行われていないのではないか、として、今月1日、県介護保険審査会の事務局となっている同センターに不服を申し立てた。
B 京都府内
初の不服申し立て 伏見区の家族 痴呆考慮求め
(12/14/1999
京都新聞朝刊 16版 26面4段分より)
京都市が行った介護保険の要介護認定の結果を不服として、痴呆症の母(83)を介護する京都市伏見区の女性(68)が、12月13日に京都府介護保険審査会に審査を求める申請手続きを行った。母親は、10月7日、要介護認定を申請。調査員の訪問を受け、11月4日に認定結果が届いたが、6段階の要介護度のうち最も軽い「要支援」とされた。長女は「家族がいなければ、母の生活は成り立たない。母の痴呆症の特徴が、ほとんど考慮されていない。このままでは、ショートステイなどサービスの一部がうち切りとなり、平成12年4月から生活が維持できない。」と訴えている。介護認定をめぐり、介護者団体から「方法に問題がある」「痴呆症は軽い判定となる」などの指摘をうけていたが、実際に不服申し立てがなされたのは、京都府内でははじめてという。
介護保険に対する苦情は、すべて介護保険審査会が受け付けるものではありません。介護サービス事業者の介護サービスに関する苦情は、1)受けている居宅介護サービス事業者・介護保険施設、2)居宅介護支援事業者(ケアプランを作成した事業者)、3)市町村の介護保険担当の順に苦情を申し入れます。しかし相談後にも解決できない場合には、最終的には国民健康保険連合会にその苦情の相談をすることになります。つまり第1次的には市町村が苦情を受け付け解決に努めます。対応困難な場合には、市町村から国民健康保険連合会へ紹介され解決されることになります。
介護保険制度では、介護サービスは原則として現物給付で行われ、介護サービス事業者はその費用の請求を、市町村から委託された国民健康保険連合会に対して行う仕組みになっています。その請求書の審査後に、費用の支払いを行います。そのため介護サービスに対する苦情・相談等も委託され業務とされています。しかし、介護保険の最終責任者はもちろん保険者である市町村であるべきです。国民健康保険組合は介護サービス事業者へのサービス改善指導しか権限がありません(図表7)。それを市町村が苦情処理を困難な理由として、国民健康保険連合会にまかせてしまうのは責任回避であります。まかせしまって介護保険の健全な運営がはたして行われるか心配です。